今回は【丘の公園】第6エイドステーションを切り盛りしている、輿水政直さんにお話を伺いしました。ゴール地点を除くと実質最後のエイドステーション。どんな思いでおもてなしをしているのでしょうか。

FUNRiDE編集部(以下、編):ご職業は土建業ということですが…...。

輿水さん:3代目です。後継者として引き継ぎまして。父が病に倒れてしまいましたので、あまり準備することもなく、バタバタと交代しまして。

編:そんな経緯があったんですね。それは最近のお話なんですか?

輿水さん:そうですね。4年前かな?

編:平行して大会の方も……

輿水さん:そうですね。もともと父が携わっていて、私もそこにお手伝いとして行ってたんですけど、だんだん父も体調が悪くなり、私が代理で行ったりしていました。実は第1回のときからお手伝いに行ってるんですよ。丘の公園のエイドステーションに行き始めてからは6年ぐらいですね。昨年から「責任者に……」、ということで。若造で何もできないんですけど、周りの重鎮の方々に見守ってもらっております。

編:実際にどんなことがありましたか?

輿水さん:初めてだったので昨年は皆さんが気を使ってくださったというか。特にトラブルもなく運営できたと思うんですけど、内輪のことはどうであれ、参加してくださる選手のみなさんにご迷惑がないようにだけはしたつもりです。

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編:エイドでご提供されるものっていうのは……

輿水さん:私たちの丘の公園のエイドは、グランフォンド・メディオフォンド・グルメフォンドの3つの参加者の方が立ち寄るところなので、かなり混雑するんです。さらに、3つのコースの人たちに提供するものが違うんです。共通なのはお水だけ。昨年ですと、グランフォンドの人たちにはきゅうりと味噌とお水、そしてミニソフトクリームでしたね。その1つ前の大会ではバナナのサービスがあったんですけど…。昨年からバナナが抜けてしまったので、ちょっと寂しい気がして。丘の公園は最後のエイドステーションですから、みなさん体力も使い果たして、おなかもだいぶ空いてるのかなあ、っていうところもありますね。

編:このきゅうりと味噌は、地元の…?

輿水さん:そうです。地元の県産のものです。グルメフォンドさんのミニトマトも金時パイの金時芋もとうもろこしも。このあたりは野菜には事欠かないので。丘の公園のエイドステーションって延々と続く上りの途中にあって、みなさんヘタってくるので、何か食べたいのも山々なんでしょうけど……。皆さん「お腹空いた」って言ってやって来ますね。もっといろんなものが食べたいっていう方々が多いです。きゅうりも少ししかないので、お味噌つけて食べたらあっという間ですよね。

編:みずみずしいきゅうりとお味噌のしょっぱさは美味しいでしょうね。

輿水さん:それを「美味しい美味しい」って言って食べてくださるので私たちは嬉しいんですけれど。

編:天気も良かったら最高でしょうね。

輿水さん:天気がね、一昨年はほんとうに残念でしたね。その前まではずっと天気良くて…。ソフトクリームなんかも評判でしたしね。これがまた行列を作ってしまって申し訳ないんですけれども。

編:やっぱり人気ありますよね。

輿水さん:きゅうりは食べなくてもソフトクリームは食べる、って人もいますね。

編:きゅうりと味噌がきたら、ノンアルコールビールでいいから飲みたくなりますよね(笑)。

輿水さん:キンキンに冷えてたら最高でしょうね(笑)。でも、ビールの「暑いときに飲んで美味しい」っていうのは、アルコールが入ってるから美味しいって言いますよね(笑)。ノンアルコールビールをいくら冷やして暑いときに飲んでも、身体に染み渡るっていうか、あの美味しさは味わえないみたいですね。「丘の公園までたどり着いたからあとはもういいや」って寝転がってビール飲んだら美味しいだろうなって思いますよ(笑)でも98km走ってきてるわけですから、あと10km走らなきゃならない。「上りばっかだなあ…」って(笑)。でも幸いにも10月はそんなに暑い気候ではないので過ごしやすいはずです。私たちはテントの中にいると日陰で逆に寒いくらいですからね。

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編:今大会からちょっとした催しを考えていて、「エイドステーションコンテスト」みたいなのをちょっとやろうかなって。まあ競ってどうこうってわけじゃなくて、参加者の皆さんが印象に残ったエイドを投票してもらって、盛り上げていければなあ、と思ってるんです。

輿水さん:いいんじゃないですかね。過剰競争みたいになってお互いにギスギスしないようにしないとね(笑)。エイドステーション同士がいがみ合って融通利かなくなったら困っちゃうからね(笑)

編:小淵沢スパティオでお話を伺ったときは、他のエイドステーションでは何をやっているのかわからないから、そういう催しをすると、いろいろ見えてきてお互いを気にするから面白いかもね、って。

輿水さん:今までも終わったあとにエイドステーションに対する評価っていうのはありまして、そういうのを見るとハッとさせられますけどね。エイドの名称を挙げてくださればなおのこと。皆さん遠慮してエイド全般でっていうお話をされることが多いんでしょうけど。具体的に名前が挙がれば、良くも悪くも来年の励みになると思いますから。いいことだと思いますよ。

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編:例えば、東京から来た方を輿水さんがご案内するとしたら、八ヶ岳はどの辺りがオススメですか?

輿水さん:もし時間があって泊まっていくっていうのであれば、ぜひ「暗闇と静けさ」っていうのを体験してもらいたいですね。もちろんお月さんも出てないときがいいんですけれど、本当に暗いっていうのと、「シーン」って音が聞こえるくらいの静けさ。これをこの田舎で夜に体験してもらいたいですね。日中は車とかが通ってしまうのでアレなんですけど。この辺はすごく星も綺麗なので、月が出ていない天気のいい夜に。冬は寒いでしょうけれども、寝転んで空を見上げて、「空と一体になる」っていうか。「シーン」っていう「音がしない怖さ」、っていうのかな、それを体験してもらいたいと思います。

編:静寂というか、そんなときはどういう気持ちになるんですか?

輿水さん:怖いですよ。ほんとうに静かで、自分が暗闇の中にポツンと置かれて。でも自分は大体寝ちゃいますけどね(笑)。暗いところで寝転んで星を見上げていると、漆黒の中にヌルヌルと溶け込んでくような感覚になります。自分の周りに何かがあるんじゃなくて、何かの中に自分がいる、っていうことがはっきりとわかりますよね。この辺だと山とか上らずとも庭でもできますから(笑)。お月さんが出てないときは玄関をガチャっと開けたら真っ暗、みたいな。せっかく遊びに来られるんですから、都会の明かりは見られなくてもいいような気がしますし、都会で聞ける音は都会で聞けばいいことですから。

編:そうですね、逆に無音って状況はなかなか作れませんからね。

輿水さん:完全防音の部屋でも聞けるんでしょうけど、ほんとにシーン、って音がずっとしているんですよね。なんでしているんだろう、音は無いはずなのに聞こえるっていう。たぶん無音の部屋はシーン、って音も聞こえないんでしょうけど、きっと。聞き耳を立てれば立てるほどそういう音がしてきて、それがふと聞こえなくなったときには寝てしまいます(笑)。それが気持ちいいですね。ふと記憶が飛んだ瞬間が。

編:なるほど。都会だと体験はできないですもんね。

輿水さん:なんとか流星群とかがときどき来るんですけど、この辺は標高が高くて空気もきれいですから、けっこう楽しめるというか、きれいですしね。空は狭いんです。山と山とに挟まれてるんで。。

編:八ヶ岳っていいところだなって暮らしていて感じますか?

輿水さん:ここに住んでるとそれが当たり前になってしまうので、なかなかいいところってわからないんですよね……。何がいいんだろう。夏が涼しいのと、空気がおいしい、お水がおいしい……。近所のおばちゃんがおせっかいなところがいいかもしれない。アットホームというか、お友達になれるし。世話もやいてくれるし。あとは意外と都会から遊びに来やすい距離にあるってこと。でも逆にいうと私たちが東京に遊びに行くのにも近いんですよ。高速道路や電車で1時間30分ぐらいで遊んでこられる。もちろん日帰りでも十分だし、ちょっと時間があるから遊んでこよう、って来られるのがいいですよね。夏の避暑から冬のウインタースポーツまで、年間通して何かやることがあるっていうのがいいところかな。

編:ぜひ八ヶ岳でも暗闇と静けさ、人情深さを楽しんで……

輿水さん:そんな機会があればいいな、って。遠くから来てすぐ帰るっていうのもひとつでしょうし、帰るにしてもちょっと夜まで待って、そういった時間を過ごしてお帰りになるのもいいでしょうし。もちろんお泊りになって、宿泊施設の近くで静かなところを紹介してもらって伺うのもいいでしょう。雪の降っているときもいいですよ~。深々と雪が降ったときは静かです。そのときは車も通りませんし……。雪の振る音が聞こえるかなあって思うんですけれども……

編:年間を通じて四季を楽しめますね。本日はありがとうございました!

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