八ヶ岳を拠点とするサイクリストの皆さんに、リレーコラムをお願いしました。テーマはやっぱり“自転車と八ヶ岳”。大自然の中でライディングする楽しさ、厳しさは味わってみて初めてわかるもの。八ヶ岳で暮らし、走るサイクリストのリアルな声をお届けします。第1回目はFUNRiDEにも寄稿をしていただいております、小俣 雄風太さんにお願いしました!



南アルプス

八ヶ岳の麓、小淵沢に越してきて早4年。自転車乗りとして4回の春と夏と秋と冬を過ごしてきました。今回、グランフォンド八ヶ岳に際して、僕の住む小淵沢でのサイクリングライフをすこし紹介したいと思います。

「わ〜、涼しい!」と夏にこの地を訪れる人々は口を揃えます。気温が上がらないのはもちろん、湿度が低くからっとした暑さは、普段ジメジメムシムシな日本の夏を過ごしている人にとっては天国のように感じるかもしれません。小淵沢や八ヶ岳南麓をライドするのに、夏は最高の季節です。

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そんな標高1000mの小淵沢ですが、一方で冬が厳しく寒いのは言うまでもないでしょう。日が落ちると−10度になることも珍しくなく、夏場にあれだけ見かけたライダーも、全く見かけなくなります。しかしそんな冬も、ライドには最高の季節だと声を大にして言いたいのです。明け方に降ったばかりの雪は、思っている以上にグリップが効くし、日本屈指の晴天率を誇るこの地域では、毎朝表情が変わる八ヶ岳をサドルの上から見ることができます。南には雄大な南アルプス。こちらもまた見飽きません。

一般にライドによい季節である春と秋はどうでしょうか。やっぱり最高の季節です。高標高地帯にやってくる遅い春は、見事なまでに道に彩りを与え、早くやってくる秋は、八ヶ岳を赤と黄に染め上げます。結局のところ、いつ走っても満足しかないのが、この地域です。

僕の職場が小淵沢よりもさらに350m高い野辺山にあるために、通勤ライドとして一年を通じて走っています。ルートには信号が2箇所しかなく、足をつかないでオフィスへ到着するのでクリートが全く減りません! 毎年コースの変わるグランフォンド八ヶ岳では、時として僕の通勤ルートをかすめて走ることも。そう思うと贅沢な場所に住んでいるとつくづく感じます。もちろん、山麓地帯であるために上りはたっぷり。自分のリズムで上り切れた時の気持ち良さは、通勤でも同じです(素晴らしいライド環境を求めてか、プロ選手の夏場の合宿でも使われることもあり、STRAVAなどでKOMを狙うのはあまりお勧めしません……)。

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泉ライン2
泉ライン(上/夏季、下/冬季)

八ヶ岳南麓でのお気に入りのルートをいくつか紹介します。まずは、通勤でいつも走る泉ライン。ここで木漏れを浴びながら走るだけで、よい1日が約束されたようなもの。勾配も緩めなので、気持ち良く走れるはずです。もうひとつは吐龍の滝への上り。夏場は観光客の車が多いので注意が必要ですが、静かな峠道ではいろんな動物に出会います。やや勾配はありますが、マイペースで刻めば清里まで上がることできます。

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吐龍の滝への上り

走りごたえを求める方にもいくつかご紹介。八ヶ岳高原ラインから一気に空まで登るような観音平は、行き止まりのワンウェイなのが惜しいですが急勾配が長く続き、登坂の辛さ(喜び)をじっくりと味わうことができます。グランフォンド八ヶ岳でもよくお目見えする海岸寺への上りは、これもキツいですが、道のカーブ具合が好みで、たまに上りたくなります。清里から野辺山を結ぶ平沢峠の南側からのアプローチも強烈。健脚の方にはぜひお勧めしたい登坂です。

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海岸寺への上り

真夏のひととき以外は交通量も少なく走りやすい八ヶ岳界隈は、いつ走っても本当に最高です。グランフォンド八ヶ岳はもちろん、それ以後も(真冬でも)ぜひ走っていただきたいロケーションです。その度に、季節と自然とを体感していただけるはずです。高原のぴりっとした空気を吸いに、ぜひお越しください。

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(テキスト/写真 小俣 雄風太)